1on1が効かない理由——「何を話すか」より「どの行動が欠けているか」

1on1を始めたが、雑談で終わって何も変わらない。話すネタが続かない。そんな相談をよく受ける。世の中に1on1のノウハウ本は溢れているのに、なぜ効かないのか。

効かない理由は、何を話すかばかりを工夫して、どの行動が欠けているかを設計に組み込んでいないからだ。1on1はあくまで器にすぎない。欠けた上司の行動を埋める場として設計しなければ、面談の回数をいくら増やしても結果は変わらない。

目次

効かない1on1に共通するパターン

効かない1on1には、いくつか決まったパターンがある。

  • 近況報告で終わる。「最近どうか」と尋ね、「特に問題ない」という返事で5分。これを毎週繰り返す。
  • 進捗確認になる。タスクの詰めの場になり、部下にとっては監視の時間と化す。
  • 話題探しに困る。「何を話せばいいか分からない」というのは、目的が定まっていないサインだ。

私が支援した会社にも、その例があった。1on1を全社に導入した従業員35名ほどの会社で、半年後、管理職から「近況報告で終わる」「話すネタがない」という声が噴き出した。面談という形だけを入れて、何を変えるための場なのかを決めていなかったからだ。

共通するのは、面談という行為そのものが目的になり、何を変えるための時間なのかが抜けていることだ。器を用意しただけで、中身を設計していない。だから、続けるほど形だけになっていく。

1on1は、欠けた行動を埋める場だ

エンゲイジメントや定着を動かすのは、上司の行動だ。私はそれを、意義を伝える、意思決定に参加させる、自律を支援する、期待を示す、の四つに整理している。これらは、部下を鼓舞・強化・結合・力づけすることで仕事への活力を高める「エンゲイジングリーダーシップ」の研究とも対応する。1on1を、このうち自社で欠けている行動を埋める時間だと捉え直すと、中身は自ずと決まる。

効かない1on1:面談の形だけ → 行動は変わらない → 関係性・裁量も変わらない → 結果も変わらない
効く1on1  :欠けた行動を特定 → その行動を中身に設計 → 関係性・裁量が動く → 結果が動く

欠けている行動ごとに、1on1の中身はこう変わる。

欠けている行動効かない1on1効く1on1に変える
自律支援進捗確認・詰めの場になる任せる範囲と判断基準をすり合わせる
参加促進報告を聞くだけこれから決めることに意見を求める
意義の伝達タスクの話で終わるこの仕事が何につながるかを共有する

先にどの行動が欠けているかを特定すれば、1on1で話すべきことは自動的に決まる。話題探しに困るのは、欠けている行動が分かっていないからだ。ネタ切れは、雑談力の問題ではなく、診断がないことの裏返しである。

「1on1は信頼関係づくりが目的では」への答え

1on1は成果を出す場というより、まず信頼関係をつくる場ではないか。そういう意見もある。

否定はしない。ただ、ここでも問いは「どの行動で信頼をつくるのか」に行き着く。雑談を重ねれば信頼が深まるとはかぎらない。むしろ、意見を求められた、任せてもらえたという経験のほうが距離を縮める。信頼関係づくりという目的も、結局は欠けた行動を埋めることで果たされる。目的の話と行動の話は、対立しない。

おわりに——まず、どの行動が欠けているかを知る

欠けている行動は、上司本人の自覚と部下の実感がズレていることがほとんどだ。自分は任せているつもりでも、部下は細かく見られていると感じている。このズレを先につかむことが、効く1on1の出発点になる。やり方を学ぶ前に、自社で何が欠けているのかを知るほうが先だ。

どの行動が欠けているかは、面談している本人にはいちばん見えにくい。部下の受け取り方を一度そろえて測ってみると、次の1on1で何を話すべきかが見えてくる。

稲上経営コンサルティングでは、組織診断でどの上司行動が欠けているかを特定し、1on1を含む運用の設計までご支援しています。1on1を入れたが効いている実感がない、というご相談からで構いません。初回のご相談(60分・オンライン)は無料です。

出典・参考

  • Schaufeli, W. B. (2015). Engaging Leadership in the Job Demands-Resources Model. Career Development International.(エンゲイジングリーダーシップ:鼓舞・強化・結合・力づけの行動が、自律性・有能感・関係性の欲求充足を通じてワーク・エンゲイジメントを高める)

執筆者

稲上経営コンサルティング|企業の採用・定着・育成・評価を中心に、これまで100社を超える組織づくりを支援。英国の経営大学院(MBA)で学んだ経営理論とビジネス現場の実感を往復させながら、経営者の感覚に頼らない、再現性のあるマネジメントづくりを支援している。

目次