エンゲイジメントが低い「本当の原因」を因果でたどる方法

サーベイをやって、エンゲイジメントが低いと分かった。だが、結局どうすればいいのかは分からない。ここで止まっていないだろうか。点数は出たのに、施策に落ちない。サーベイを入れた会社が、いちばん多くぶつかる壁だ。

エンゲイジメントが低いというのは、結果であって原因ではない。本当の原因は、二段階でたどると名指しできる。まず、関係性(上司との信頼)と、裁量・有能感(心理的エンパワーメント)のどちらの経路が切れているか。次に、その上流で、上司のどの行動が欠けているか。スコアで終わらせないことが、改善の分かれ目になる。

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スコアだけでは動けない

「エンゲイジメント62点」と言われても、何をすればいいかは出てこない。点数は体温計のようなものだ。熱が38.5度あると分かっても、風邪なのか疲労なのか感染症なのか、原因が分からなければ薬は選べない。

私が支援した会社にも、その例があった。サーベイで58点と出た従業員80名ほどの会社で、点数は毎年律儀に出していたが、そこから何をすべきかが分からず、結局は放置されていた。「サーベイをやっても変わらない」の正体はここにある。体温だけ測って、原因の診断をしていない。体温計を高性能なものに買い替えても、診断をしなければ治療は始まらない。

原因は二段階でたどれる

原因は、勘で当てるものではなく、順にたどるものだ。この二段階は、働く人の活力を高める「仕事の資源」(上司との関係性や裁量など)と、それを削る「仕事の要求度」(負荷)を分けて捉える、仕事の要求度−資源モデルの考え方に沿っている。

STEP
エンゲイジメントが低い(活力・熱意・没頭が落ちている)

どちらの経路が切れているか?

関係性(上司との信頼・敬意)が低い
裁量・有能感・意味の実感(心理的エンパワーメント)が低い

STEP
その上流の上司行動は?

意義を伝える/参加させる/自律を支援する/期待と信頼を示す——のどれが欠けているか

  • 第1段で関係性の経路が切れているなら、対人的な信頼の立て直しがいる。
  • 裁量・有能感の経路なら、任せ方や意味づけの問題だ。
  • 第2段まで下りて、上流の自律支援が弱いと分かれば、打ち手は任せ方の設計に定まる。

ここまでたどって、はじめてスコアが施策に変わる。逆に言えば、ここをたどらないかぎり、何点であっても打ち手は出てこない。

切れている経路現場で起きること打ち手の方向
関係性(信頼・敬意)上司への信頼が薄い対人的な信頼の立て直し
裁量・有能感任されない・成長感がない任せ方・意味づけの設計
過負荷(職務要求度)関係も裁量も悪くないのに低い仕事量そのものの調整

負荷の見落としに注意

もう一つ、見落とされがちな要素がある。過負荷だ。関係性も裁量も悪くないのにエンゲイジメントが低いなら、原因が単純な仕事量の多さということがある。仕事の要求度−資源モデルでも、過大な職務要求度はエンゲイジメントを押し下げる方向に働くとされる。

ここを飛ばすと、関係性の施策を打っても効かない。負荷が原因なのに「上司の関わりが足りない」と結論づければ、現場はかえって疲れていく。原因を取り違えないために、負荷のスクリーニングを先に通すのが定石だ。

「エンゲイジメントは数値化になじまない」への答え

エンゲイジメントは人の気持ちの問題で、数値化にはなじまない。そういう反論がある。

気持ちそのものは、たしかに完全には数値化できない。だが、ここで測るのは気持ちの絶対値ではなく、どの経路・どの行動に偏りがあるかという当たりだ。体温が病気のすべてを表さなくても、診断の入口としては役に立つ。数値を絶対視せず、原因を絞り込む手がかりとして使う。この距離感さえ守れば、数値化は十分に働く。

おわりに——中小企業での測り方

中小企業では、大がかりな仕組みより、原因まで名指しできることのほうが大事だ。手順はこうなる。

  1. エンゲイジメントと、その上流(関係性・裁量・上司行動・負荷)をまとめて測る
  2. どの経路が切れ、どの行動が欠けているかを特定する
  3. 最も効く一点に絞り、測り直して効果を確かめる

測る、原因を名指す、打つ、また測る。このループが、サーベイをやりっぱなしにしないための条件になる。

自社のスコアが、どの経路のどの行動から来ているのか。点数を眺めるだけでは見えてこない。上流まで一度たどってみると、「何点を上げるか」ではなく「どの行動を直すか」で話せるようになる。

稲上経営コンサルティングでは、結果だけでなく上流の原因まで特定する組織診断と、その後の打ち手の設計をご支援しています。サーベイはやったが施策に落ちない、というご相談からで構いません。初回のご相談(60分・オンライン)は無料です。 

出典・参考

  • ワーク・エンゲイジメント(活力・熱意・没頭):ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度(UWES/Schaufeli ほか、ユトレヒト大学)
  • Spreitzer, G. M. (1995). Psychological Empowerment in the Workplace. Academy of Management Journal, 38(5).(心理的エンパワーメント:有意味感・有能感・自己決定・影響)
  • Demerouti, E., Bakker, A. B., Nachreiner, F., & Schaufeli, W. B. (2001). The Job Demands-Resources Model of Burnout. Journal of Applied Psychology, 86(3).(職務要求度=過負荷はエンゲイジメントを押し下げ、仕事の資源は高める)

執筆者

稲上経営コンサルティング|企業の採用・定着・育成・評価を中心に、これまで100社を超える組織づくりを支援。英国の経営大学院(MBA)で学んだ経営理論とビジネス現場の実感を往復させながら、経営者の感覚に頼らない、再現性のあるマネジメントづくりを支援している。

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